📌 なぜ電動パーキングブレーキにスキャンツールが必要なのか?


近年、電動パーキングブレーキ(EPB)を採用する車が増えてきています。
EPBは電子制御されているため、従来の手動式とは異なり、整備には専門的な知識と機器が必要です。
スキャンツールを使用することで、EPBの点検や整備、メンテナンス作業がスムーズに行えるようになります。
本記事では、EPBの基本的な知識から、スキャンツールを使った具体的な活用方法までわかりやすく紹介します。
1. EPBの基本概要:仕組みとスキャンツールが必要な理由
多くの車両に搭載されるようになった電動パーキングブレーキ(EPB)は、従来のワイヤー式パーキングブレーキとは異なり、電気モーターとECU(電子制御ユニット)によって制御されています。このシステムの導入により、運転の利便性や安全性が向上した一方で、整備の際にはスキャンツールが不可欠となりました。本章では、EPBの仕組みと、スキャンツールが必要な理由について詳しく解説します。
EPBの仕組みと動作原理

EPBは、基本的にブレーキキャリパー内のモーターまたは専用のアクチュエーターによって動作します。
システム全体は**車両のECU(電子制御ユニット)**と連携しており、運転者の操作に応じて自動的にパーキングブレーキを作動・解除します。
EPBの主要構成部品
EPBシステムは、主に以下の部品で構成されています。
- EPBスイッチ(車内に設置されたON/OFFスイッチ)
- ECU(電子制御ユニット)(ブレーキ制御の頭脳)
- EPBモーター(アクチュエーター)(ブレーキを作動・解除するモーター)
- 車速センサー・ブレーキセンサー(自動作動のための補助センサー)
- ワイヤーレス制御システム(モーター式の場合)
スキャンツールが必要な理由
EPBは電子制御のため、整備や修理の際にスキャンツールを使用しないと適切な診断や作業ができません。
以下のような理由で、スキャンツールが不可欠となります。
✅ 1. 故障コード(DTC)の読み取り・消去
EPBに異常が発生した場合、ECUに**DTC(Diagnostic Trouble Code=故障コード)**が記録されます。
例えば、以下のようなエラーが発生することがあります。
- C2000系エラー(モーター異常)
- C1000系エラー(通信不良)
- C1200系エラー(センサー異常)
スキャンツールがないと、これらの故障コードを確認・消去できないため、原因不明のまま修理を進めることになり、誤診のリスクが高まります。
✅ 2. メンテナンスモード(サービスモード)への移行
ブレーキパッド交換時には、EPBのモーターがブレーキをかけたままになっているため、
スキャンツールを使用して「メンテナンスモード」へ移行する必要があります。
スキャンツールによるメンテナンスモード移行手順

- スキャンツールを車両のOBD-IIポートに接続
- 「EPBメンテナンスモード ※ 」を選択
- EPBモーターが解除され、キャリパーがフリーの状態になる
これを行わないと、ブレーキキャリパーがロックされたままで、パッド交換ができません。
無理に作業を進めると、モーターやキャリパーの破損につながる可能性があります。
※トヨタ車などで使われている名称です。
3. キャリブレーション(調整・学習)
EPBのモーターやブレーキパッドを交換した後は、スキャンツールを使用してキャリブレーション(調整・学習)を行う必要があります。
キャリブレーションが必要なケース
- ブレーキパッド交換後 → 新品ブレーキパッドの厚みに合わせて調整
- EPBモーター交換後 → ECUが新しいモーターを正しく認識するように設定
- ECU交換後 → EPBシステム全体の再学習が必要
キャリブレーションを行わないと、
ブレーキの引きずりや作動不良が発生する可能性があります。
4. 強制解除(緊急時対応)
バッテリーが上がった場合や、EPBの故障時には、スキャンツールを使って強制解除を行う必要があります。
スキャンツールによる強制解除手順(例)
- スキャンツールを接続し、EPBメニューを開く
- 「EPB強制解除」オプションを選択
- モーターが作動し、EPBが解除される
スキャンツールがないと、バッテリーが上がった際に車両を移動できなくなる可能性があるため、
特にロードサービスなどの多くの現場でも活用されています。
2. スキャンツールの接続と基本操作:EPB診断の第一歩
EPB(電動パーキングブレーキ)の診断やメンテナンスを行うには、スキャンツールを車両のOBD-IIポートに接続し、診断モードを起動する必要があります。本記事では、OBD-IIポートへの接続方法や診断モードの起動手順について、詳しく解説します。
OBD2コネクターへの接続方法
スキャンツールを使用するには、まず車両の OBD2コネクターに接続しなければなりません。
📍 OBD2コネクターの設置位置
車種によって異なりますが、一般的には以下の場所に設置されています。
運転席の足元(一般的)
センターコンソール付近(シフトレバー周辺)
助手席側のダッシュボード裏
ヒューズボックス内
OBD2ポートは、ほとんどの車両でアクセスしやすい場所に設置されていますが、
一部の車両ではカバーが付いている場合があるため、取り外しが必要なこともあります。
スキャンツール接続手順
必要なもの
スキャンツール(メーカー指定の診断機または汎用OBD-IIスキャナー)
車両のキー(またはプッシュスタートボタン)
安定した電源供給(バッテリーの状態確認)
接続手順
1️⃣ エンジンOFFの状態で、OBD-IIポートを確認する
🔹 スキャンツールを接続しやすいように、運転席周りを整理しておく
2️⃣ スキャンツールをOBD-IIポートに接続
🔹 コネクターをしっかりと差し込み、接続を確認
3️⃣ 車両のキーをON(またはエンジン始動)
🔹 一部の車両では「アクセサリー(ACC)モード」でも診断可能
4️⃣ スキャンツールの電源を入れる(自動起動するタイプもある)
🔹 スキャンツールが車両のECUと通信を開始
5️⃣ 「車両診断メニュー」から「EPB診断」を選択
🔹 メーカーごとにメニュー名称が異なる場合があるため、マニュアルを確認
診断モードの起動手順
スキャンツールを接続した後は、EPBの診断モードに移行します。診断モードでは、以下の操作が可能です。
DTC(故障コード)の読み取り・消去
メンテナンスモード(ブレーキパッド交換時の設定)
キャリブレーション(調整・学習)
EPBの強制解除(緊急時対応)
診断モードへの移行手順
スキャンツールのメニューから「EPB」または「ブレーキシステム」を選択
メーカーによって「Electronic Parking Brake」「Brake Control」など名称が異なる場合がある
「診断」または「DTC(故障コード)確認」を選択
現在のEPBの状態を確認し、エラーコードがあるかをチェック
「メンテナンスモード」または「サービスモード」を選択(ブレーキパッド交換時)
選択すると、EPBのモーターが解除され、キャリパーがフリーの状態になる
「キャリブレーション」を選択(交換部品の学習)
新しいブレーキパッドやモーター交換後に実施
「強制解除(エマージェンシーモード)」を選択(バッテリー上がりなどの緊急時)
EPBが作動したまま解除できない場合に使用
ポイント!
診断モードに移行する際は、車両が完全に停止していることを確認する
一部の車種では、診断モード移行時にブレーキペダルを踏む/アクセルを踏むなどの追加操作が必要な場合がある。
まとめ
EPBの診断やメンテナンスには、スキャンツールをOBD2コネクターに接続し、適切な診断モードに移行することが重要です。
OBD2コネクターは、運転席の足元やセンターコンソール周辺に設置されている。
スキャンツールを接続し、車両のキーをONにして診断を開始
EPBの診断モードでは、DTCの確認・消去、メンテナンスモードへの移行、キャリブレーション、強制解除が可能
適切な手順で接続しないと、誤作動や診断エラーが発生する可能性があるため、慎重に作業することが重要。
3. EPBの診断とメンテナンス
EPB(電子パーキングブレーキ)の診断とメンテナンス:整備士が知っておくべきポイント
EPB(Electronic Parking Brake)は、近年の車両に多く搭載されている技術です。電子制御でパーキングブレーキを操作するこのシステムは、従来の機械式ブレーキよりも便利で効率的ですが、その分、メンテナンスや診断が少し複雑です。今回は、整備士として知っておくべきEPB診断とメンテナンスのポイントを解説します。
1. 故障コード(DTC)の読み取りと消去
EPBシステムに異常が発生すると、故障コード(DTC)が記録されます。これを正確に読み取ることが、問題を早期に発見するための第一歩です。DTCの読み取りには、専用の診断機器が必要です。整備士としては、以下の手順でDTCを確認し、必要に応じて消去する方法を理解しておきましょう。
- DTCの読み取り:車両の診断ポートにツールを接続し、EPBに関連する故障コードを表示します。具体的なコードが示された場合、それに基づいて原因を特定します。
- DTCの消去:問題が解決した場合、故障コードを消去してシステムをリセットします。これにより、次回の診断時に新しい故障が記録されるのを防ぎます。
2. サービスモード(ブレーキパッド交換時)
EPBのシステムには、ブレーキパッドを交換する際に使用する「サービスモード」があります。このモードを使用することで、ブレーキキャリパーを安全に動かすことができ、交換作業がスムーズに行えます。サービスモードの操作は、車両の診断ツールで簡単に切り替えが可能です。
- サービスモードの設定方法(例):診断ツールを使って「サービスモード」に切り替えます。これにより、ブレーキキャリパーが適切に位置決めされ、ブレーキパッドの交換がしやすくなります。
- モード終了後の確認(例):交換作業が終わったら、サービスモードを解除し、システムを通常状態に戻します。これを忘れると、車両の走行に影響を及ぼすことがありますので、注意が必要です。
3. キャリブレーション(調整・学習)
EPBシステムは、定期的なキャリブレーション(調整・学習)を行うことで、常に最適なパフォーマンスを発揮します。特に、ブレーキパッドの交換後やシステムの修理後にはキャリブレーションが重要です。
- キャリブレーションの必要性:パーキングブレーキの動作精度を保つために、センサーやアクチュエーターの位置を再調整します。このキャリブレーションを行うことで、車両の安全性が向上します。
- キャリブレーションの実施方法:診断ツールを使ってシステム内のキャリブレーションを行います。操作方法は車種やモデルによって異なるため、車両のマニュアルや診断ツールの指示に従ってください。
4. 故障診断とトラブル対応
よくあるエラーとその対処法
EPBシステムに関するトラブルが発生した場合、適切な診断と対処が重要です。よくあるエラーとその対処法について解説します。
バッテリー上がり時の強制解除
バッテリーが上がってしまった場合、EPBが作動しないことがあります。この時は、強制的にブレーキを解除する方法が必要です。
- 強制解除の手順:診断機器を使って、EPBを強制的に解除するモードに切り替えます。車両によって手順が異なる場合があるので、マニュアルに従いながら進めます。
- 確認事項:強制解除後は、必ずバッテリーを確認し、適切に充電してから再試行します。
スキャンツールを活用した修理事例
スキャンツールは、EPBシステムのトラブル診断に欠かせないアイテムです。以下は、スキャンツールを使った修理の事例です。
- 診断の流れ:スキャンツールを車両に接続し、EPBに関する故障コード(DTC)を読み取ります。コードに基づいて、部品の状態や接続の問題を特定。
- 修理手順:必要に応じて、キャリブレーションや部品交換を行い、その後、スキャンツールでリセットをかけます。これにより、エラーが解消され、正常な動作が戻ります。
スキャンツール使用のメリット・デメリット
メリット
正確な診断が可能 → どの部品が故障しているか特定できる
メンテナンスモードが使える → ブレーキパッド交換などがスムーズに
手動ではできない操作が可能 → 故障時の強制解除、キャリブレーションなど
整備時間の短縮 → 無駄な分解作業を減らし、修理時間を短縮
デメリット
スキャンツールが必要 → 純正スキャンツールと違い汎用ツールでは対応できない場合もある
操作に知識が必要 → 誤った操作でシステムに不具合を起こす可能性
コストがかかる → 高機能なスキャンツールは価格が高い
メーカー別の違いと注意すべきポイント
EPBシステムはメーカーや車両のモデルによって異なる設計がなされているため、スキャンツールの使用方法も異なることがあります。以下に代表的なメーカー別の特徴と注意点をまとめます。
1. メーカーごとの診断メニューの違い
メーカーごとに診断メニューや故障コード(DTC)の種類、表示方法が異なります。そのため、使用するスキャンツールがその車両のメーカーに対応しているか確認することが重要です。例えば、ある車両では「EPB診断」を選択するメニューが異なり、「Electronic Parking Brake」や「Brake Control」と記載されていることがあります。
2. 診断機器の互換性
スキャンツールには、メーカー専用の診断機器と汎用的なスキャンツールがあります。汎用ツールは、基本的な診断は行えますが、高度な機能(メンテナンスモードの設定やキャリブレーションなど)は対応できない可能性があります。そのため、メーカー指定の専用ツールを使用することが推奨されます。
3. 診断手順の差異
メーカーによって、診断モードの起動手順や強制解除の方法が異なる場合があります。例えば、特定の車両では診断中にブレーキペダルを踏む、アクセルを踏むなどの追加操作が必要なこともあります。このような車両の特性を把握しておくことが重要です。
4. ソフトウェアの更新
一部のスキャンツールは、最新の車両モデルや新しいEPBシステムに対応するためにソフトウェアの更新が必要となることがあります。定期的にスキャンツールのソフトウェアを更新しておかないと、最新の故障コードや診断機能に対応できない可能性があります。
5. 車両固有の注意点
車両ごとに、例えばEPBモーターの位置やセンサーの配置が異なり、それに伴って診断手順や必要な調整が変わることがあります。車両のマニュアルやスキャンツールの指示を確認しながら作業を進めることが必要です。
まとめ
EPB(電動パーキングブレーキ)は、電子制御によって作動するため、整備や故障診断にはスキャンツールが欠かせません。故障コードの読み取り・消去、サービスモードへの移行、キャリブレーション、強制解除などを行うためには、診断機器を適切に使用することが大事です。これらの手順をしっかりと把握しておくことで、EPB搭載車両のメンテナンスや修理がスムーズに行えるようになります。
これらの作業を確実にこなすことで、車両の安全性を保ち、効率的に修理を行うことができます。EPBの診断・メンテナンス技術は、今後ますます重要になるため、常に最新の知識を身につけておくことが大切です。
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元トヨタ系ディーラー工場長が発信する整備士ブログ。
資格:トヨタ検定1級/自動車検査員。
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