整備士目線で読み解く部品を“動かして診る”。
アクティブテストが整備の現場を変える

スキャンツールを操作してアクティブテストを行う整備士の手元の様子
スキャンツールを操作してアクティブテストを行う整備士の手元の様子

 スキャンツールを使用したアクティブテスト

~現場整備士のための実践ガイド~

現代のクルマは、診断機なしでは触れない時代になりました。
センサー、アクチュエーター、ECU…複雑に思える制御も、整備士の“経験”と“感覚”に、スキャンツールという「目に見える証拠」が加われば、診断の精度は飛躍的に向上します。

この記事では、整備士の現場感覚を軸に、「アクティブテスト」に焦点を当てて解説していきます。



1. はじめに

● アクティブテストとは?

車にこちらから命令を出し、部品を実際に「動かしてみる」テスト。
単なる故障コードの読み取りではわからない、「動作の有無」や「作動の異常」を直接確認できます。

● なぜ今、アクティブテストが重要なのか

・無駄な部品交換を防ぎ、コストダウンにつながる
・整備士の感覚を裏付ける“動かして確かめる”手段
・「壊れてるか分からない部品」に、明確な答えを出せる

たとえば、エアコンが効かないという症状で入庫した車両。
アクティブテストを使わず、整備士の経験とカンだけで進めた場合、コンプレッサーや圧力センサーを次々と交換しても症状が改善せず、結果的に2日がかりでようやくリレーの作動不良にたどり着いたという事例がありました。

一方、同じような症状でアクティブテストを使ったケースでは、最初の診断で「リレーが動作していない」ことがすぐに確認でき、部品の特定と交換までを半日で完了。結果として、整備時間は4分の1、部品代は1万円以上の節約になりました。

こうした差が出るのは、アクティブテストが「今、実際に部品が動いているかどうか」をその場で確かめられるからこそ。
経験とデータの“ズレ”を埋める手段として、今や現場には欠かせない存在となっています。

● スキャンツールの進化と整備現場の変化

最近のツールは操作性が向上し、実践的に使いやすくなっています。
とくにスキャンツールのような国産車に強い汎用スキャンツールは、現場の第一線で大きな力を発揮しています。

そして何より大切なのは、整備士の感覚や経験。
アクティブテストは、こうした肌感覚を“裏付ける材料”として活かすのが最大のポイントです。


2. アクティブテストの基本

● アクティブテストでできること・できないこと

  • できること
    • ファンモーターの強制ON
    • EGRバルブ開閉
    • インジェクターの個別作動
    • パワーウインドウ動作確認
  • できないこと
    • 断線・接触不良の直接判断(ただし「作動しない」という結果がヒントに

3. 実際の使用手順

● 操作の流れ

  1. OBDポートに接続
  2. 車両選択(メーカー・型式)
  3. 対象の年式を選択
  4. 「アクティブテスト」を選ぶ
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  5. 作動させたい部品を選んで「ON」
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● 操作中のポイント

  • ON/OFFの切替でしっかり反応を見る
  • 作動音や動きを自分の感覚で確認する
  • 並行してデータ表示をチェックすれば、動作の裏付けも取れる

4. 車種別・実践的アクティブテスト事例

【事例1】トヨタ ヴォクシー(ZRR70系)

症状:冷却ファンが回らない
→ スキャンツールでファンモーターを強制ON
→ 無反応 → リレー or モーター不良に的を絞れる

【事例2】スズキ ワゴンR(MH34S)

症状:アイドリング不安定
→ 各インジェクターを個別作動
→ 1番インジェクターで変化なし → 交換前に抵抗値や配線点検へ

【事例3】日産 ノート(E12)

症状:ドアミラー格納しない
→ アクティブテストでモーター動作確認
→ 反応なし → モーター断線かBCM出力異常の判断材料に


5. アクティブテストでミスを防ぐコツ

  • 作業前チェック
     バッテリー電圧 / エラーコードの保存 / 通信の確認
  • 安全対策
     ファンやワイパーが急に動く → 手・工具の巻き込み注意!
  • 複数人で作業
     車外と車内で連携する場合は声かけ必須!

6. 現場でよくあるトラブルと対処法

  • テストができない  → 通信不良 / キー位置 / 車種未対応などを確認
  • 反応がないとき  → ツール側?車両側? → 他車両でテストしてスキャンツールの状態を切り分け
  • OBD接続の不良  → 端子清掃 / バッテリー状態確認 / 外部電源も活用

7. 感覚・経験を活かすアクティブテスト

アクティブテストの結果を見たとき、「あれ、いつもと音が違う」「動き方がぎこちない」――
こうした感覚を拾えるのが、経験ある整備士の強み

「数値」+「感覚」で診断すれば、見落としも減り、判断の自信にもつながります。
そして何より、 動作が“見える“聞こえる” ことで、新人や後輩への指導もやりやすくなります


8. まとめ:アクティブテストで“攻めの診断”へ

アクティブテストは、受け身の診断から“攻めの診断”へと変えるツール。
スキャンツールを「ただのコード読み取り器」に終わらせず、
経験・感覚・データを融合させた、現場ならではの診断スタイルが求められています。

電子制御が当たり前のこれからの時代、
アクティブテストは、 整備士にとっての“第三の感覚” になるはずです。

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元トヨタ系ディーラー工場長が発信する整備士ブログ。
資格:トヨタ検定1級/自動車検査員。
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